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術前診断
 全身的な診断をしたのちに、インプラント治療の難易度を左右する顎の骨の量と質をレントゲン撮影して調べます。
 まずパノラマを撮影し、大まかな顎の骨の状態を診ます。 上顎は鼻の穴の空洞や蓄膿の時に膿が貯まる空洞があり、3次元的に複雑な形態をしていますので、ほぼ全症例CTを撮影します。
 下顎は神経との距離が近く、シビアな手術の場合はやはりCTを撮影します。しかしながらパノラマで十分な顎の骨の量があることが判断できる場合は必ずしもCTを撮影する必要はありません。
 パノラマ
 パノラマはどの歯科医院にもあるレントゲン撮影装置です。丸い地球を四角い紙に表現した世界地図のように、左の耳から右の耳への180度の立体の顔を平面に伸ばした図になっています。フィルムに写された画像は実際の大きさの約1.3倍に拡大されています。
 上顎では鼻の穴(鼻腔)と蓄膿の時に膿が貯まる空洞(上顎洞またはサイナス)があり、この空洞を避けて骨のあるところを審査します。下顎には骨の中に太い神経が通っているので、この神経の上にどれだけの量の骨があるかを審査します。

下は歯がすべて無くなってしまった方のパノラマレントゲン画像とその模式図です。(ノーベルバイオケアジャパンから許可を得て提供された図を改編)
青いラインが骨の外形です。黄色いラインは眼窩(目の入っている空洞)、鼻腔(鼻の穴)、上顎洞またはサイナス(蓄膿の時に膿が貯まる空洞)を表しています。赤いラインは下顎の骨の中にある神経が通っている穴です。
この方のように長年入れ歯を使っている方は特に下顎の奥歯の骨がやせてしまって、神経との距離が近いためにインプラントを埋め込むことができないケースが多いです。
しかしながら下顎の中の神経は正中から後ろに数えて5番目の歯のあたりまでしか通っていないので、そのまえの部分の骨はインプラントを埋め込むのに最適です。
上顎は鼻腔と上顎洞があり上顎洞は人によって形が様々ですので、下顎のように単純にはいきません。
 CT(Computed Tomography)
 パノラマは平面図であり、骨の高さと幅はわかりますが、厚みはわかりません。CTによって3次元的な顎の骨の形と骨密度がわかります。上部構造である人工歯の下にどれだけの骨があるかを診断したうえで、埋め込むインプラントの長さ、太さ、形態を選択します。さらにどの位置からどの方向にドリルを進めると理想的な位置にインプラントを埋め込むことができるかを診断します。

  *実際の治療例でご説明します。

CTのみを撮影してもあまり意味がありません。必ず診断用ステントを作りこれを装着した状態で撮影をします。こうすることによって診断用ステントに埋め込んだ上部構造のシルエットをCT画像に写し込むことができます。
診断用ステントを装着した状態。人工歯の部分に鉛が取り付けてあります。
撮影したパノラマ画像
 診断用ステントを装着した状態で撮影したCT画像です。
この方の場合、左の奥歯から右の奥歯まで合計83枚の断面図が表示されています。
83枚の断面図
 右上のCTの画像に表示されている顎の骨の立体表示です。上下顎の骨の3Dイメージとステントに埋め込まれた歯のシルエットの位置関係がよくわかります。

 
前から見た図
横から見た図
CT画像の上に表示してある図は顎の骨を頭の上から見た図です。CTでの立体表示画像にある線で水平にスライスした断面図となっています。
 ステントに埋め込んだ歯のシルエットは白い点で表示されています。
歯のシルエットにあたる部分の10枚の断面図(赤と緑のライン)が右の図です。
赤のラインでの断面ではインプラントを埋め込むことのできる骨がありますが、緑のラインでの断面図をみると骨の厚みがほとんど無くここにはインプラントを埋め込むことができないことがわかります。

緑の矢印の部分は骨の厚みがほとんどありません
以上の診断結果からインプラントの埋入計画を立てます。
骨の厚みが無いところを避けて合計8本の埋入を計画しました。
図の上が前歯、下が奥歯になります。前歯の部分は固い骨を表している白い部分にインプラントを接触させることによって、強固な固定が得られることが予想できますが、奥歯の部分は白い部分が薄く内部はかなり柔らかいことが予想できます。
術直後の状態です。合計6本のインプラントで即時荷重を行いました。術前の予想どおり、左後方の2本のインプラントは十分な固定が得られなかったため、噛む力が加わらないように(免荷重)して周りの骨が成熟するのを待ちます。
 フィクスチャーテンプレート
 レントゲンフィルム上で最適のフィクスチャー(インプラント)を選択するためのテンプレートです。フィクスチャーのシルエットが透明なフィルムに描かれていて、レントゲンフィルムに重ね合わせて手術の際の埋め込む位置、方向、深さなどを診断します。
CT上では倍率100%のものを、パノラマ上では倍率130%のものを使います。
パノラマに重ね合わせる
拡大図

オペ直後(術前の計画どおりに埋入されたインプラント)
 サージカルステント
 レントゲン撮影するときにお口の中に入れて撮影をするプラスチック製の装置です。この装置は最終的な歯の形をした透明なプラスチックでできていて、上部構造である人工歯の位置と方向を示すレントゲンで白く写るバリウムが埋め込まれています。この装置は手術の際にお口のなかにいれてインプラントを植え込む際に骨を削るドリルの位置と方向の指標になります。歯が一本無くなったケースから全く無いケースまで様々な形態のものがあります。
 レントゲン撮影につかったステントを手術用に改造します。レントゲンフィルム上で設計したインプラントを埋め込む位置、方向、深さを手術に反映させるための重要なステップです。フィルム上に映し出されたバリウムのシルエットを基準にして骨を削るドリルの方向をガイドできるように改造します。術者がオペをしやすい様に形を修正していきます。このステップは実際のオペのイメージトレーニングにもなります。
レントゲン撮影用
オペ用に改造
ステントを入れて撮影
オペ後
before
after
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